東京高等裁判所 昭和24年(新を)2959号 判決 1950年9月28日
被告人
渡辺豊
主文
省略
理由
前略。
論旨第二点について。
原審がその第一回公判期日に於て、検察官、弁護人双方からの申請の証人、関根初五郎を次回に取調べることとし、証人尋問の方法は、交互尋問によるものとしながら、第二回公判期日に於て、裁判官が同証人の尋問を開始したことは所論の通りである。しかし、検察官、弁護人双方の申請に係る、証人に対する交互尋問は、特に不相当なる事情がない限り、検察官より尋問を開始するのが当然であつて、(刑事訴訟規則第一九九条参照)所論のように、検察官弁護人のいずれより、先ず尋問すべきであるかを決定する必要を見ない。本件に於て検察官が先づ同証人を尋問してはいけない事情を認めることができないのであるから、検察官より先ず尋問するとの決定をまたずとも、検察官よりこれを開始するのが順序として正当であるといわねばならない。しかるに、右関根初五郎の尋問期日に偶々主任検察官が不在のため、同公判に列席した検察官から証人尋問については裁判所に一任すると述べ、弁護人もこれに同意した結果、裁判官が右証人を尋問したものであることは、第二回公判調書の記載に徴し明白である。従つて被告人又は、弁護人の意見を聴かないで原審が証拠調の方法を変更したわけではないから、右手続に刑事訴訟法第二九七条第三項に違反するものであると主張する論旨はその理由がない。
(註、本件は量刑不当により破棄自判)